2025/10/16

疲労を軽減するには?疲れが溜まる原因や回復させる方法

「何だか体がだるい」「朝起きてもスッキリしない」など、日常的に疲れを感じていませんか?その疲労感は、体からの大切なサインかもしれません。

疲労とは、体や心に負担がかかった結果、日常的な活動能力が下がってしまう状態のことです。日本疲労学会の抗疲労臨床評価ガイドラインでは、「過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態」と定義されています。

疲労は誰にでも起こりうる自然な反応ですが、その原因を知って対応すれば、より健やかな毎日を送ることにつながります。この記事では、疲労が溜まる仕組みや主な原因、効果的な回復・対策方法、疲れにくい体を作る方法についてご紹介します。

疲労が溜まるメカニズム

疲労は体のダメージと回復力のバランスが崩れることで発生し、ダメージが回復力を上回ると疲労が溜まってしまいます。具体的には、ヒトが活動するために、体内では神経細胞、筋肉細胞、免疫細胞などで多量のエネルギーが作られ、消費されており、同時に「活性酸素」が発生しています。通常はこの「活性酸素」は体内で処理されますが、活動量が回復力を上回ると体内での処理が追い付かず、細胞がダメージを受けることで治りにくい状態になります。修復のためのエネルギーが不足すると、1か月以上にわたって疲労が続くこともあります。

疲労が溜まる主な原因は?

通常は、疲労を感じても十分に休息したり、睡眠をとったりすると回復しますが、回復が間に合わず疲労が蓄積すると、日中の集中力低下だけでなく、十分に睡眠をとっても疲れが取れない、気持ちが落ち込むといった症状が生じやすくなります。また、慢性的な疲労が頭痛や肩こりなどの症状を引き起こすケースも珍しくありません。ここでは、疲労の蓄積につながる原因について解説します。

過度なストレス

継続的なストレスは脳に著しい負担をかけ、疲労をもたらします。意志に反する事柄はストレスとなり、心の疲労と密接につながっています。また、ストレスに適応しようとして多くのエネルギーを消費したり、ストレスそのものが疲労感を増加させたりしてしまいます。

脳への負担

一方で、日々膨大な情報を処理することで、脳が過労状態に陥るケースも目立ちます。パソコンやスマートフォンの普及により、常に情報にさらされる現代生活は、目を酷使し、脳の緊張状態を長時間維持させてしまうのです。

睡眠不足

睡眠は代謝やエネルギーの回復、活性酸素の消去といった重要な役割を果たしており、睡眠不足は代謝に悪影響を及ぼすことや、全身の活性酸素を増加させることが報告されています。良い睡眠には、量(時間)と質(休息感)が重要で、睡眠の質には、深さ、連続性、入眠のしやすさ等が関わっています。そのため、不規則な生活リズムや就寝時間の乱れは、睡眠の質を低下させ、疲労につながります。

栄養不足

食生活の乱れにより必要な栄養素が不足すると、疲労を感じやすくなります。炭水化物や脂質は、私たちの体にとって重要なエネルギー源です。これらの栄養素を効率良くエネルギーに変換するためには、ビタミンの働きが欠かせません。たとえば、ビタミンB1は主に炭水化物の代謝に、ビタミンB2は主に脂質の代謝に関わっています。また、ビタミンCには抗酸化作用があり、疲労の原因となる活性酸素を消去する働きがあります。1つの栄養素ではなく複数の栄養素の過不足が複雑に関わり合っており、疲労感を軽減するためには、適切なエネルギー、栄養素の摂取が重要だと考えられています。つまり、特定の栄養素ではなく、バランスよく食べることが大切です。

運動不足

十分な運動習慣がないと筋肉量が減少し、エネルギーを生み出すミトコンドリアの量や質も低下します。ミトコンドリアとは細胞のエネルギー生産を担う重要な細胞小器官です。ミトコンドリアの質が低下すると活性酸素も蓄積しやすくなるため、体が疲れやすい状態に陥ります。

疲労を回復する方法

疲労は溜め込まずに、こまめに回復することが大切です。効果的に回復するためには、日々のセルフケアが不可欠です。ここからは、実践しやすい方法をご紹介します。

良質な睡眠をとる

良い睡眠のために、睡眠時間を確保し、睡眠の質を高める工夫をしましょう。例えば、睡眠中には成長ホルモンが分泌され、ダメージを受けた筋肉の修復やエネルギー代謝の改善を通じて疲労感の軽減をサポートします。成長ホルモンは特に、入眠後最初の深い眠り(ノンレム睡眠)の時間帯に多く分泌されるため、質の高い入眠を確保することがポイントとなるでしょう。そのためには、規則正しい生活習慣、日中の適度な活動、カフェインやお酒を控える、就寝前のリラックスなどを心がけることがおすすめです。

バランスの良い食事をとる

ゆっくりとよく噛んで食べることで、消化吸収が促進され、栄養素の利用効率も高まります。特に、ビタミンB群は、体内で糖質や脂質をエネルギーに変える働きを助けるため、疲労回復に重要な役割を果たします。また、ビタミンCの抗酸化作用は、疲れの原因となる活性酸素を消去し、体の回復をサポートします。そのため、ビタミンB1が豊富な豚肉、ビタミンB2が豊富なレバー、ビタミンCが豊富な野菜や果物など、ビタミンを多く含む食べ物を意識的に取り入れることが大切です。また、筋肉のエネルギー源や修復に重要な役割を果たすBCAA(分岐鎖アミノ酸)を豊富に含む鶏の胸肉や大豆もおすすめです。

さらに、運動で生じた乳酸を再利用してエネルギーに変える働きがあるクエン酸を豊富に含むレモン果汁もおすすめです。食事でとることが難しい場合は、栄養ドリンクやサプリメントなども補助的に活用すると良いでしょう。ただし、あくまで食事の補助として位置づけ、基本的には食べ物からの栄養摂取を優先すべきです。

軽めの運動をする

気分転換を兼ねて、ウォーキングやストレッチなど、過度な負荷をかけない範囲で運動しましょう。血流を促進し疲労物質の排出を助けます。特に日中に適度なトレーニングを取り入れると、ほどよい疲労感を得て、夜の睡眠の質向上にもつながるでしょう。ただし、就寝直前の激しい運動は交感神経を刺激し、逆効果となる場合があるため注意が必要です。

長めにお風呂に入る

入浴は心身のリラックスに大きな効果をもたらします。特に39℃以下のぬるめの湯船にゆっくり浸かることで、副交感神経が活性化されリラックス状態になります。入浴剤を活用したり、お気に入りの香りを楽しんだりすることで、さらなるリラックス効果が期待できるでしょう。

スムーズな入眠につなげるには、就寝の1~2時間前に入浴を済ませるのが理想です。これにより、睡眠の質を高める効果も期待できるのです。

疲れにくい体を作る方法

ミトコンドリアの機能維持・向上

疲れにくい体をつくるためには、ダメージと回復力のバランスを保つために必要な、エネルギー産生と抗酸化力について対策することが重要です。その一つとして、「ミトコンドリアの量と質(機能)を増やすこと」が効果的な手段の一つとなります。

ミトコンドリアは体のほぼすべての細胞に存在しています。ミトコンドリアは細胞のエネルギー生産工場であり、車におけるエンジンのような存在です。適度な運動習慣や栄養補給によってその数と機能を維持または向上させることが、疲れにくい体づくりの秘訣となります。エネルギーを作るときに発生する活性酸素は、増えすぎるとミトコンドリアも傷つけてしまうため、活性酸素を消去する抗酸化物質がミトコンドリア機能の保護に有効とされています。

慢性的に倦怠感がある背景には、ミトコンドリアの機能が低下している可能性も考えられるため、適度な運動を継続することで改善を図りましょう。

健康的な生活習慣

疲労は誰にでも生じうる自然な反応ですが、その原因を理解し適切に対処すれば、深刻化を未然に防ぐことが可能です。バランスのとれた食生活、質の高い睡眠の確保、適度な運動、そして入浴習慣の確立こそが、疲れを溜めにくい体づくりの鍵となるでしょう。また、疲れを感じたときには早めの休養を心がけましょう。

日々の小さな習慣の積み重ねが、やがて全身の健康と活力につながります。自分自身の体調と真摯に向き合い、心身のバランスを整えていきましょう。

還元型コエンザイムQ10は、細胞から元気を支える成分として注目されています。ストレスの指標である自律神経機能を改善し、ストレス軽減にも関与する可能性が示唆されています。また、ミトコンドリアの活性を高め、内因性抗酸化物質の産生を促進することで抗酸化・抗炎症作用を発揮するなど、多面的な働きが期待されています。詳しくは以下の記事をご覧ください。

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