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還元型コエンザイムQ10の吸収と輸送

還元型コエンザイムQ10(4)

還元型コエンザイムQ10の吸収と輸送についてご説明します。

還元型コエンザイムQ10の吸収と輸送

1 酸化型コエンザイムQ10は吸収過程で還元型コエンザイムQ10に変換される

酸化型コエンザイムQ10は小腸から吸収されてリンパ管に移行する過程で還元型に変換される

コエンザイムQ10は脂溶性(油に溶けやすい性質)が高く水溶性が低いため、ビタミンEや脂肪酸などの脂溶性の栄養素と同様の経路で吸収されます。まず十二指腸で胆汁酸によって乳化され、ミセルと呼ばれる水に分散可能な微粒子に取り込まれます。ミセル中のコエンザイムQ10は小腸の上皮細胞に吸収され、トリグリセリド、リン脂質、コレステロール、タンパク質で形成されるキロミクロンと呼ばれる微粒子に取り込まれてリンパ管に移行します。その後、血流を経由して肝臓に入り、リポタンパク質に取り込まれて、再び血流中に分泌され、各臓器に運ばれると考えられています。コエンザイムQ10の吸収は脂肪を多く含む食物(胆汁酸が分泌されやすい)によって促進されることが知られています。酸化型コエンザイムQ10は小腸上皮細胞で還元酵素により抗酸化作用のある還元型コエンザイムQ10に変換されると考えられています。(※1)
尚、酸化型コエンザイムQ10を還元型コエンザイムQ10に変換する代表的な酵素であるDT-diaphorase (NQO1)やThioredoxin reductaseの活性は加齢とともに低下することが報告されています。(※2,3)

※1 日本コエンザイムQ協会編(2015) コエンザイムQ10の基礎と応用

※2 Lōpez-Lluch G et al.,(2005) AGE 27: 153-160

※3 Shih PH et al., (2007)Biogerontol 8: 71-80

2 経口摂取後の血中移行性

還元型コエンザイムQ10を日本人の健常成人10名(男子、女子各5名)に150mg、5名(男子)に300mgをそれぞれ食後に単回経口投与した際の血中還元型コエンザイムQ10濃度推移を検討した結果を表すグラフ

還元型コエンザイムQ10を日本人の健常成人10名(男子、女子各5名)に150mg、5名(男子)に300mgをそれぞれ食後に単回経口投与した際の血中還元型コエンザイムQ10濃度推移を検討した結果が報告されています。図のように、いずれの投与量でも血中還元型コエンザイムQ10濃度は摂取後6時間まで上昇し、150mg投与では1.88 µg/mL、300mg投与では3.19 µg/mLのピークに達しました。
半減期(血中濃度が半分になるまでの時間)はおよそ48時間と推定され、還元型コエンザイムQ10には血中に比較的長く留まる性質があると考えられます。(※4)

※4 Hosoe K et al, (2007)Reg Toxicol Pharmacol 47:19-28

3 血液からの臓器移行性

コエンザイムQ10の血液から臓器への移行性については主に動物で検討されています。例えば、モルモットに放射性の炭素(14C)で目印を付けた酸化型コエンザイムQ10を静脈内投与した場合に、24時間後の臓器重量当たりの放射活性が脳<腎臓<心臓<脾臓,肝臓,副腎の順で高くなったことが報告されています。(※5)
ヒトにおける臓器移行性については倫理的な問題もあり、報告は稀ですが、豪州の研究者は心臓バイパス手術を予定している患者51名に1日あたり300mgの酸化型コエンザイムQ10を2週間経口摂取させ、手術時に心臓の筋肉を採取して心臓への移行性を調べました。その結果、心臓の筋肉中コエンザイムQ10含量は、コエンザイムQ10を摂取していない患者56名に比べて約2.5倍に上昇し、経口摂取したコエンザイムQ10が心臓に移行することが判りました。(※6)

※5 Yuzuriha T et al, (1983)Biochim Biophys Acta 759:286-291

※6 Rosenfeldt F, (2005)J Thrac Cardiovasc Surg 129:25-32

還元型コエンザイムQ10の安全性についてご紹介。